「追認」を容認するものではない・・・農業委員会会長

 橋本市長が、鳥栖市の将来にとって、極めて需要な事業であるとした新産業集積エリア事業が大幅に遅れている。その原因は、全ての地権者との合意が遅れていること、違反状態の是正ができないところにある。こうした中、尼寺議員は、前議会に引き続いて、、鳥栖市が固執している「追認」よりも、法務局が示した手法のほうが違反状態是正のハードルが低いとして、市の考えを質した。

契約の解除も契約金の返済も不要

尼寺議員 先日、法務局に問い合わせたところ、農地法違反の是正について、「契約を解約することも、契約金を返す必要もない。錯誤で登記を抹消した後に、農業委員会に農転許可を申請し、許可が下りた日を原因到達日として再登記をすればいい」ということであった。市の見解は

経済部長 その手法は、新たに承諾書などに同意の上、実印を押印していただく必要があり、全ての方に協力をえることは困難であると判断している。

尼寺議員 困難といわれるなら「追認」も同じであり、市長や経済部長ら、市の幹部が地権者宅を訪問し、きちんと説明すれば協力はえられるはず。なぜしないのか。農転許可を得る場合、通常では委任状などの必要書類は3か月以内のものが必要だと聞くがどうか。

農業委員会会長 農地法第5条の申請では「土地登記事項証明書や市独自に定めた書類の委任条及び印鑑証明書など」、有効期限を3か月以内としている書類があり、取り扱い案件に関わらず添付書類の提出をお願いしている。

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市は当初「登記を元に戻す」(=錯誤で登記を抹消する)について、「契約の解除、契約金の返済が必要であり、それは極めて困難だから、追認という手法をとる」と説明してきた。それが、いくつかの書類の提出に変わった。しかし答弁にあるように「追認」の場合でも同様の書類は必要であり、「全ての方の協力を得るのは困難」になるのではないか。市の考えは破綻しているのでは。

会長「追認を容認していない」

尼寺議員 追認について農業委員会の考えは

農業委員会会長 農業委員会として、申請書を申請される前ですので、予め追認を容認しているものではない

尼寺議員 このように市が進めようとしている「追認」は農業委員会の考えとは、異なっており、市は農業委員会の指導に従うべきではないか

橋本市長 申請前の段階なので、追認を容認していないと、受け止めている。農業委員会の理解が得られるよう、説明に努めていきたい

「追認」が時間もかかるし、ハードルも高い

尼寺議員 会長さんは、まだ申請前なので、そこを含んで申請前であるからといっているだけではないか。 法務局が示した手法と「追認」を比べてみた場合、どちらにしても、地権者を再訪問して、3か月以内に発行された書類を入手しなければならず、その労苦は同じ。ただ、前者の場合はそれで農地法違反の是正はできる。ところが後者は違反の是正はできない。 さらに、農業委員会には、農転許可を申請する場合、違反状態のまま受理することはできないという考えもあると聞いている。さらに農業委員会が申請を受付けても、不認定という判断もありうるし、いずれにしても、「追認」のほうが、よりハードルが高く、違反是正の時間がかかるのではないか。

橋本市長 登記を戻さずに農地転用申請し、受付けていただく方法でと考えているが、申請までに課題を整理し、関係機関と協議確認してまいりたい

法令に従って違反の是正を

農業委員会は今まで、不許可のまま転用が発覚した場合、原状回復など厳しく対応してきた。もし農業委員会が市の求めに応じて「追認」を認めれば、、民間と行政で対応が異なる「二重基準」だとして農業委員会の信頼は大きく損なわれる。

昨年行われた農業委員会と県との勉強会でも、県の担当者は「登記を元に戻して申請というのが、正しいやり方」だと言っている。追認ではなく、法務局が示して手法に従って、違反の是正を進めるべきではないか。

▼今までの経緯

鳥栖市は、H28年3月までに農地転用許可を受けずに、地権者と農地の売買契約をして、鳥栖市名義に移転登記をした。(全体の地権者の約3分の2)。 さらにこの違反行為が判明した後、農業委員会が違反しないよう指導したにもかかわらず、残りの農地についても同様の違反行為をした事がH29年5月発覚した。

その後、市は、登記を元に戻すやり方と、「追認」を検討し、県の許可を得たとして、登記を元に戻すのではなく、「追認」という手法をとる事にした。

一方、九州農政局からは「追認許可については農地法には明文化されておらず、農業委員会は違反者等に対しては現状回復させるべき。今回の件は農地を転用してしまったのではなく、登記を元に戻したら済む話」と、聞く。

市は、登記を元に戻すとなれば、「契約を解除し、すでに支払った土地売買金を返金」してもらわねばならないし、それは困難だから追認という手法をとると説明していた。

ところが、尼寺、成冨議員が「違反の是正方法」について法務局に確認したら、「契約を解除や契約金を返す必要はない。錯誤で登記を抹消し、農転許可を得てから、再登記をすればいい」と。今回の質問では、市はこの法務局の見解を否定しなかった。

法務局が示した手法と「追認」を比べると、追認の場合「認可の申請をしても受理しない。受理しても認可しない」事態になることは否定できず、農地法違反状態是正のハードルは高い。農地法違反転用行為

農水省のHPによると、違反転用行為とは、「許可を受けないで転用するために農地又は採草放牧地の権利の設定移転した者」としている。 農業委員会会長は、今回の件はこれに該当すると答弁。

新産業集積エリア事業

総事業費は約73億円。鳥栖市の負担は半額の37億円。昨年11月に新たに2名と用地契約を締結し、残る未契約者は2名となった。計画では、H28年より造成工事に着手し、5年後のH32年度に分譲を開始する予定であった。

今後残る2名と契約が締結されたとしても、農地転用、開発許可申請などの法的手続きや工事契約などの手続きを行うがあり、その後、造成工事に約5年程度、工事完了後に分譲開始となり、計画よりも大幅に遅れる。これまでに総額21億円の借り入れを行っており、その借金返済は2年後の令和4年度から始まる。

鳥栖民報1561

 

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